人はなぜ老化するのか?さまざまな老化学説を紹介

●さまざまな老化学説

人は生き続けていれば必ず老化する。これは真理である。

 

人はなぜ老化するのか?
その疑問を解明するためにさまざまな実験や研究が行われてきた。現在も行われている。

 

だが、その疑問の明確な答えは、いまだ見つかっていない。

 

だが、現在一定の支持を集めている説はある。

 

その説を紹介しようと思う。
 

1、消耗説

「人体と細胞は酷使と乱用によって損傷する」という説。
ドイツの生物学者、オウグスト・ワイズマンが一八八二年に発表した学説だ。

 

内臓や肌などさまざまな器官は、砂糖、カフェイン、アルコール、ニコチン、紫外線、放射線といった食品的環境的毒素や身体の酷使や精神的ストレスによって消耗する。労働などで酷使すればさらに激しく消耗する。結果、老化が進行してしまう。

 

以上がワイズマンの説だ。
 

2、内分泌説

内分泌腺から出されるごく微量のホルモンによって、私たちの身体は、特定の器官の働きがコントロールされている。たとえば血糖値を下げたり、血液中のカルシウム濃度を保ったり、細胞の代謝をコントロールしたりと、生きていくために不可欠の調整が体液を流れるきわめて微量の物質によって行われている。その重要なホルモンの分泌が、加齢とともに減ってくる。
 

よく知られているように、成長期には成長ホルモンがたくさん出るし、成熟期には性ホルモンが活発に働く。さまざまなホルモンは年齢によって正常値が違う。

 

一方、人間ドックなどで血液の生化学検査をしたときに出てくるGOTやGPTなどの正常値は、年齢に関わらないものとされている。年齢別の正常値という規定はないのである。年齢とともに変化するから見直すべきだという主張もあるけれども、老化によって正常ではなくなっているのだとも考えられる。
 

だが、ことホルモンに関しては、すべてのホルモンとは言わないまでも、年齢による正常値の変化があるとされている。たとえば、歳を取ると若いころに比べてインスリンが出にくくなるので、年齢とともに糖尿病のような症状が増える。
 

体の中では数十種類ものホルモンが相互に関連して生産されており、何か一つのホルモンの生産が低下すると、別のホルモンにも影響を与える。しかも一兆分の一gというレベルで効果を及ぼすものもあるほど、微量で作用しているのがホルモンなので、バランスの崩れからもさまざまな不都合が現れる。
 

結果として、自己治癒力や自己調節機能が年齢とともに衰えてくるというのである。
 

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3、遺伝子支配説

DNAには、すべてのことがプログラミングされているとする説である。身体的な機能から特徴まで、私たちのDNAには書き込まれている。肌の色や血液型と同じように、どのくらい速く走れるか、どのくらい長生きできるかもすでにDNAのプログラムで決まっているというのである。
 

その具体例としてとりざたされているのが、いわゆる長寿遺伝子の存在である。この遺伝子が働けば、細胞分裂が遅れて老化のスピードが遅くなるという。また逆に、老化を促進する老化遺伝子があるという説もある。だからアンチエイジングのためには、長寿遺伝子のスイッチを入れるか、老化遺伝子を止めるという考えが生まれる。

 

●一般に動物は、飢餓状態にして活動性を低下させると寿命が延びる 

動物実験によると「sir2」という長寿遺伝子は、カロリーを控えることによってオンになることがわかっている。一般に動物は、飢餓状態において活動性を低下させると寿命が延びる。ミジンコでは一・七倍、ラットでは一・四倍に延びたというデータもある。
 

しかしこれが人間に当てはまるかというと、仮説の域を出ない。たしかに欧米では摂取カロリーが多い人ほど短命だったから、一時期は信奉者も増えたが、飢餓状態にある国民は決して長生きしていない。国連人口基金の二〇〇八年の調査では、北朝鮮の平均寿命は六九・三歳と、同じ朝鮮半島の韓国よりも約一〇歳低い。
 

二〇世紀の終わりに、人間の遺伝子の塩基配列(遺伝情報を記したもの)こそ読み解かれたが、どの部分がどんな機能を果たしているかなど未解明のところが多く、アンチエイジングなどへの応用はこれからという段階である。
 

4、フリーラジカル説

「フリーラジカル」とは、対であるはずの電子を一つ失っているため、非常に不安定な分子のことだ。この不安定感を解消するために、ほかの分子から電子を奪おうとする性質がある。呼吸や紫外線によって生み出される活性酸素は、フリーラジカルの代表的存在である。
 

ほかの物質にぶつかって電子を奪う過程で、またフリーラジカルが発生して、連鎖的に反応を引き起こす。フリーラジカルは物質を酸化させる。たとえば脂肪酸は酸化の結果、有害物質の「過酸化脂質」になってしまう。過酸化脂質は周囲を次々に酸化していき、細胞壁のコレステロールやタンパク質も酸化させてしまう。つまり、細胞を損傷させるのだ。
 

フリーラジカルは呼吸によっても生じており、健康にいいとされる有酸素運動でも大量に発生する。動物は酸素によってエネルギーを作り出しているので、フリーラジカルは避けられないものだが、過剰に存在していると明らかに細胞の損傷が大きくなる。
 

激しい運動をするアスリートは、年齢のわりに意外なほど老け込んでいたり、短命だったりすることも事実としてある。

 

●フリーラジカルではない活性酸素もある

一般的に「活性酸素」というと、体内で作られる4つの活性酸素のことを指します。

 

4つの活性酸素

・スーパーオキシド
・ヒドロオキシラジカル
・過酸化水素
・一重項酸素

 

このうちフリーラジカルに当てはまるのはスーパーオキシドヒドロオキシラジカルだけです。つまり連鎖的にフリーラジカルを作り出すリスクがあるのはこの二つだけということになる。

 

●フリーラジカルは必要なもの。
でも過剰に生成されると健康を害するリスクが生じる

フリーラジカルは、人間の代謝活動で大切な役割をもっているとされているが、それが過剰に生成されると、細胞が傷ついたり、老化を促進させたりするリスクがある。

 

過剰に生成される原因は、不規則な生活やアルコールの大量摂取、過重なストレス、偏りのある食生活など。

 

●フリーラジカルの対策

フリーラジカルの過剰生成を抑える方法は、生活習慣の改善と抗酸化食品の摂取。

 

生活習慣を改善するためにすること

・適度な運動をする

・質のよい睡眠をとる

・バランスの良い食事を摂取する

 

抗酸化力が高い食品

・緑黄色野菜(かぼちゃ、ほうれん草、ニンジンなど)

・ビタミンCが豊富な食べ物(いちご、レモン、キウイフルーツなど)

・ポリフェノールが含まれている飲み物(ワイン・ココアなど)

・リコピンが豊富な食べ物(トマト、すいか、さくらんぼなど)
 

5、テロメラーゼ説

遺伝子のDNAの末端に、テロメアという染色体を保護している場所がある。直線の末端部分だから、ほつれたり傷ついたりしないようになっているわけだ。この部分が細胞分裂を繰り返すたびに短くなる。やがてこのテロメア末端が限度を超えて短くなると、細胞は分裂できなくなる。つまりテロメアが、細胞の寿命を規定していると考えられている。
 

ただ、このテロメアは「寿命のろうそく」のように生まれつき長さが決まっているわけではなく、テロメラーゼという再生酵素によって修復されることがわかってきた。
 

この酵素は胚細胞とガン細胞にだけ見られるもので、うまくコントロールすることで寿命を延ばしたり、ガン細胞の分裂を食い止めたりできるのではないかと研究が進んでいる。

 

●その他の説

そのほか、エラー説、免疫異常説、突然変異説、異常タンパク蓄積説、ミトコンドリア異常説など、多くの学説があるのだが、この五大学説も含めて「絶対にこれが正しい」というのもないし、まったく見当違いというものもない。
 

おそらく老化の原因はすべての老化説が大なり小なり関係していると考えられるから、対処できる要因はできるだけ対処しておいたほうがいいということになる。