普段の会話でも使える心理学 その2 【ドア・イン・ザ・フェイス】

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ドア・イン・ザ・フェイスとは?

ビジネスの交渉テクニックとしてよく使われる「ドア・イン・ザ・フェイス」は、最初に非現実的な大きい要求をして、相手に断られた後に、要求のハードルを下げて承諾させるテクニックを意味します。

 

日本人は「ドア・イン・ザ・フェイス」に弱い!?

人の心は、それがどんなに非現実的で大きな要求だったとしても、「断る」ことで何かしらの罪悪感を持ってしまうものです。特に日本人は外国人より義理人情に熱い人やモラルの高い人が多いので、「断る」ことに罪悪感を感じてしまう人が多いです。強引な新聞勧誘やしつこい宗教勧誘がなくならない事実からも日本人には断ることに罪悪感を感じてしまう人が多いことが推測できます。

 

そして断ることに罪悪感を抱きやすい人はこの「ドア・イン・ザ・フェイス」テクニックに引っかかりやすいです。

 

理由は断るごとに罪悪感が増していく可能性があるからです。一度目の「断り」で罪悪感を抱く人は二度目の「断り」でも罪悪感を抱く可能性が高いです。二度目の「断り」で罪悪感を抱く人は三度目の「断り」でも罪悪感を抱く可能性が高いです。

 

実際に二度目の断り、三度目の断りで罪悪感を抱いた人はいたとしましょう。この人の罪悪感は断るごとに大きくなってしまいます。罪悪感が大きくなるにしたがいこの嫌な気持ちから解放されるには相手の要求を聞き入れるしかないという気持ちが大きくなります。

 

そんな嫌な気持ちが大きくなっているところに一つ目・二つ目の要求より小さな要求をされると「この要求だったら前の要求よりマシだ」と思ってしまい、その要求を聞き入れしまう確率が高くなります。さらに次の要求が「この要求だったら前の要求よりマシだ」と思うような要求だったら、相手の要求を聞き入れてしまう確率はさらに高くなります。罪悪感から解放されたいという気持ちが強い場合はさらにその確率は高くなります。

 

以上のように罪悪感を抱きやすい人は「ドア・イン・ザ・フェイス」テクニックを使われると、罪悪感を抱かされたあげく、「この要求だったら前の要求よりマシだ」という理由で相手の要求を受け入れてしまうという可能性が高いのです。

 

さらに相手の同情話を鵜呑みにする人はさらにその可能性高くなります。相手の同情話によって可哀想と思ってしまった人はさらに罪悪感を抱きやすい状態になってしまうからです。相手の要求を断るたびに「こんな可哀想な人の要求を聞き入れてあげられない私はなんて心の狭い人間なんだろう」という罪悪感を抱いてしまうからです。

 

ドア・イン・ザ・フェイスの心理実験

アメリカを代表する社会心理学者でアリゾナ州立大学の教授を務めているチャルディーニは、大学生を対象に「ドア・イン・ザ・フェイス」テクニックの効果を検証しました。

 

実験1

まず初めに「これから2年間、毎週2時間ずつ、青年カウンセリング・プログラムに参加してくれないか?」と頼みます。

 

ほとんどの学生がこの依頼を断りました。このプログラムは、ボランティアであって、報酬は無いためでした。

 

そこで要求を「ある日の午後、1日だけ子供たちを動物園に連れていってくれないか?」というようにハードルを下げてみました。(実はこちらが本当の要求)

 

最初の依頼を断った学生の約50%が二つ目の依頼を引き受けました。

 

実験2

道行く学生に「学習訓練のために人間に電気ショックを与えてくれないか?」と頼んでみたところ大半の学生が断りました。

 

ですが続けて「では、人間ではなくネズミに電気ショックを与えてくれないか?」と頼むと、多くの学生が渋々受け入れたのです。

 

これは「人間に電気ショックを与える」より「ネズミに電気ショックを与える」ほうが楽と思った人が多いという証拠ではないかと思います。

 

ドア・イン・ザ・フェイスの実用例

日常生活においても無意識のうちにドア・イン・ザ・フェイスのテクニックを使っている場合があります。

 

実例1

会社で上司が部下に「この仕事、明後日までにお願いできないかな?」頼みました。

 

「忙しいのでちょっと無理ですね」と部下に断られました。

 

「じゃあ1週間後までならできるかな?」とハードルを下げてみます。

 

すると部下は「それならできるかもしれない」と思い、引き受けました。

 

実例2

 とある出版業界。

 

「最終的な締め切りは1週間後でお願いします」と担当さん。

 

「とてもじゃないが無理だよ」と断る作家さん。

 

「では10日後でお願いできないでしょうか?待ってもらえるよう編集長に掛け合ってみますので」と担当さん。

 

「わかったよ」としぶしぶ承諾する作家さん。

 

実例3

とある家庭。

 

「毎日3時間勉強しなさい」と母親。

 

「そんなの無理だよ」と息子。

 

「仕方ないわね。じゃあ、毎日、1時間勉強しなさい。それくらいならできるでしょう?」

 

「うん。できると思う」と息子。3時間勉強するのは無理だけど1時間ならできそうな気がすると息子は思ったのだ。

 

実例4

「今度デートしない?」と誘う男性。

 

「デートはまだ早いんじゃないかな?まだあなたのことよく知らないし」

 

 「そうだね。キミのいうとおりだ。じゃあ、メルアド教えてよ。メルアドがわかっていれば、メールのやり取りを通してお互いのことを知り合えると思うんだ。そう思わない?」

 

「そうね。私もそう思うわ」

 

「じゃあ、メルアド教えてくれる?」

 

「うん」彼女は男性にメルアドを教えた。

 

実例5

「キスしていい?」

 

「ダメ」

 

「じゃあ、抱きしめていい?」

 

「ダメ」

 

「じゃあ、手をつないでいい?」

 

「いいわよ」

 

そして2人は手をつないだ。

 

実例6

とある友人同士の会話。

 

「タバコと酒とつまみ買ってきて」

 

「嫌だよ。そんなに。めんどくさい」

 

「じゃあ、タバコだけでいいから買ってきて」

 

「それならいいよ」

 

実例7

とある中古車の営業店。

 

300万の車が展示されている。

 

その車に少し興味を持つ客。

 

営業マンはその客に言った。「今はキャンペーン中なので50万円引きの特別特価で販売しております」

 

300万の車が250万で買えると知った客はその車を買うことを決めた。

 

ドア・イン・ザ・フェイスの注意すべき点

ドア・イン・ザ・フェイスのテクニックを用いる場合、3つのポイントに注意しなければなりません。

 

●一つ目のポイント

一つ目は、非現実的な要求の後「すぐに」次のハードルを下げた要求をしなければならないこと。

 

例えば「一万円貸してくれ」と頼んで断られて、数日経過した後に「千円でいいから貸してくれ」とお願いしても、拒否される確率は高まります。

 

「デートしてほしい」と頼んで断られて、数日後に「メルアドを教えてほしい」とお願いしても断られる可能性は高くなります。

 

ハードルの高い要求をしたすぐあとにハードルの低い要求をすること。そうすれば断られる可能性を低くすることができます。

 

ある調査では、1週間も経つとドア・イン・ザ・フェイスの効果は、ほぼゼロになるというデータも出ています

 

人は忘れる生き物です。時間が経つほどに忘れる可能性が高くなります。ドア・イン・ザ・フェイスの効果はそんな記憶と密接な関係があります。つまり、ドア・イン・ザ・フェイスが効果的なのはハードルの高い要求を鮮明に覚えている間だけ。時間の経過とともにその要求の記憶が薄れれば、ドア・イン・ザ・フェイスの効果も薄れてしまます。だから記憶が鮮明なうちにドア・イン・ザ・フェイスを使う。それがドア・イン・ザ・フェイスの成功率を上げる最善の方法です。

 

●二つ目のポイント

二つ目に「最初の要求で相手を怒らせてはいけないこと」があります。

 

最初の要求が大きすぎてしまうと、相手は怒りや敵意を持ってしまうことがあるのです。

 

例えば、住宅販売を行っているとして、相手の予算も考えずにやたら高い物件を紹介しても、それは単に顧客を怒らせてしまう可能性を高めるだけです。怒らせてしまえば住宅が売れる可能性は限りなくゼロに近づきます。

 

初対面の人にいきなり「キスをさせてくれ」とお願いすれば、相手に人格を疑われたり、怒られたり、怖がられたり、変態のレッテルを貼られたりなどマイナスの印象を与える可能性が高いです。そんな状態の相手にドア・イン・ザ・フェイスを使っても効果はほとんどない場合が多いでしょう。

 

ドア・イン・ザ・フェイスは使う相手に合わせて、最初の要求を「断ると罪悪感を持つ」くらいのレベルにすることがポイントになります。

 

「本当の要求」の前に「到底無理な要求」というワンクッションを挟むことで、承諾される確率も大きく変わってくるでしょう

 

初対面の人にいきなり「結婚してほしい」とお願いすれば断られる可能性が高い。そのあとドア・イン・ザ・フェイスは使っても効果がない可能性も高い。はじめの要求の段階ですでに相手に強い不快感を抱かせてしまったためだ。初対面の人にはあまりハードルの高すぎない要求をすることがドア・イン・ザ・フェイスを成功させる鍵です。

 

相手がどういう人間なのかを推察して、ハードルの高すぎない要求をしましょう。そうすればドア・イン・ザ・フェイスを成功させることができるはずです。

 

●三つ目のポイント

一つ目の要求と二つ目の要求の差をあまり大きくしない。

 

大きすぎる要求のあとに小さすぎる要求をすると相手にコイツなにか企んでるんじゃないかと疑われる可能性が高くなります。

 

ドア・イン・ザ・フェイスを使われたときの対処法

ではドア・イン・ザ・フェイスのテクニックを使われたとき、どう対処すればいいのか?

 

それは「不要な罪悪感を持たない」ことです。

 

ドア・イン・ザ・フェイスは断ることに対しての罪悪感を利用したテクニックなので、そういう意識を持たないように心掛ければ、はっきりと「NO!」と言えることができます。

 

またドア・イン・ザ・フェイスを使う人の中には同情を引く言葉や態度を使って相手に同情心を抱かせ、よりドア・イン・ザ・フェイスの効果を高めようとする人がいます。

 

いずれにしても相手に罪悪感を抱かせて自分の要求を通そうとするような幼稚な人の言葉など徹底的の「NO!」と言いつづけるのが賢明な行動だと思います。特に営業マンなどで客に罪悪感を抱かせ、商品を買わせるような奴は社会人として問題があると思います。そんな営業マンの商品など買うことはその営業マンを付け上がらせるだけです。そういう営業マンは付け上がると味をしめ、さらに客に罪悪感を抱かせる方法を多用するようになります。付け上がった営業マンを少しでも減らすために罪悪感を抱かせる方法を使う営業マンには徹底的に「NO!」を言い続けましょう。

 

●特別価格という魔力

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という値札を見たことがありませんか?これもドア・イン・ザ・フェイスです。「今ならこんなに安く買えるんだ。今買わなかったら後悔する気がする。買おう」とこの値札を見て買う人はいるはずです。これがただ100000円と表記されているだけだったら買ってくれる人は確実に減るはずです。希望小売価格+値引き価格+特別価格の三連コンボの表記が普通の表記よりも客の購買意欲を高めてくれるのです。

 

タイムセールもドア・イン・ザ・フェイスの応用テクニックと言えるでしょう。

 

※疲れているときや精神状態が不安定のときなどはご用心

疲れているときや精神状態が不安定なときなどはこの手の値札などが貼られていると買う気がなかったのにもかかわらず、値札の魔力に負け、ついつい買ってしまうときがあります。量販店やスーパーに行くときは調子の良いときに行くことをおすすめします。そうすれば必要のないものを買う可能性が低くなります。